07/06/10 歌舞伎座昼の部②「閻魔と政頼」

染五郎の長男「藤間 齋 初お目見得」で親戚代表と高麗屋幸四郎に紹介されていた播磨屋吉右衛門(控え目にほとんどしゃべらずにニコニコ頭を下げているのがよかった)。構成・脚本を松貫四の筆名でした新作「閻魔と政頼」。「妹背山婦女庭訓 小松原~吉野川」でしっかり泣かされた後で、気持ちをほぐしてもらえるかと期待して観たら・・・・・・。
【閻魔と政頼(えんまとせいらい)】
狂言の「政頼」をもとにした松羽目物の舞踊劇。今回の配役は以下の通り。
閻魔大王=富十郎 鷹匠政頼=吉右衛門
赤鬼=歌六 青鬼=歌昇
あらすじは以下の通り。
揚幕からまず閻魔大王が登場して「地獄の一丁目に住まいする閻魔大王にて候」などと名乗りをあげる。最近は世の中が泰平になったし、人間たちも言葉巧みに言い逃れて極楽行きになる者が多くなってしまった。あらためて厳しい詮議をしようと決意を固め、赤鬼と青鬼を六道の辻に赴かせると、鷹匠の政頼がやってくる。主君の鷹を逃がしてしまい首を切られてしまい、途中で鷹と巡り会って一緒に連れてきたのだった。閻魔はに「鷹狩りで小さな獣や鳥を殺した殺生の罪」を問うが、「獲物を捕らえたのは鷹であって自分ではない」と弁明。やりとりの中で鷹狩りの由来を物語る長唄にのって政頼が舞う。閻魔が興味を示したのを幸い、鷹狩り体験をさせることになり、鬼どもを勢子にし、冥土の獲物を鷹がとってくる。その褒美になんでもやると約束した閻魔に頭上の冠を所望。ところがこれは駄目だという閻魔。政頼は腹を立てて鷹にとらせてしまう。冠をとられた閻魔は通力を失って右往左往。その隙に政頼は娑婆に戻ろうとし、閻魔と赤鬼・青鬼が「やるまいぞ」と追いかけて、幕。
富十郎が閻魔大王の衣裳に相当工夫したということをきいているがなるほどの拵え。発声も狂言を意識してさらに大きなお声で気合が入っている。学校がない週末は鷹之資くんも後見に出すということで、裃をつけて金色の観音像を持ってきたり、お茶を持ってきたりしている。
「えっ?鷹?鷹?」というところは鷹之資と顔を見合わせるという親馬鹿チャンリンお定まりのチャリも入れてある。初日近くでご覧になった方たちのレポよりもバージョンアップしているんじゃないかと思えるくらいの大きな声とオーバーアクション!
歌六の赤鬼・歌昇の青鬼コンビのぼやき漫才のチャリ場。最近の人間は白黒つけようと迫ると「ビミョー」と答えるというような当世のことばを盛り込んでいる。
吉右衛門も正月の初夢にひっかけて「一富士」と「三なすび」を自分で描いた裃をつけての登場。長唄にのっての軽妙な舞い。ところがこれが眠くなってしまった。大体私は長唄の高い声をきくと眠くなりやすい。鷹狩りの歴史を長唄で延々と歌われてもあまり面白くない。長唄は色っぽい内容の方がいい。吉右衛門の語りで説明してもらいたかったな。それだったら睡魔は寄り付かなかったんじゃないかな。
鷹狩りの実演も揚幕に鷹を投げ込む→獲物をつけた鷹の人形が投げ返されてくるという演出。狂言の方法を真似したらしいが、大きな劇場には不向きかも。また、獲物の鳥を鳥の丸焼きみたいにしたところはゲキ×シネ「アオドクロ」で鋼の鬼龍丸が火炎放射で焼き鳥をつくった場面を思い出してしまった(染五郎が出ていたし、もしかして同じ小道具屋さんで調達??)。それを「ムシャムシャ」「バリバリ」と狂言チックにかぶりつかれましても~(笑)
勢子の鬼さんたちもけっこうな人数が出てきても、動きもゆったりしているし、たいしたことがなかった。
吉右衛門と富十郎のおふたりとも頑張って弾けていただいているのだが、面白さはかなり中途半端な感じ。この中途半端さに2005年9月歌舞伎座の「東海道中膝栗毛」で富十郎・吉右衛門コンビで弥次さん喜多さんを観た時の感じを思い出した。まぁ、愛知万博閉幕直前の時局ネタだと大目にみたのだった。
まぁ、吉右衛門が次々と新作に取り組む意欲を応援していこうとは思っている。
さて、五月演舞場歌舞伎で「鬼平」を観て、アマゾンで買った本をちょうどこの頃に読み終わった(かしまし娘さんの記事で存在を知ってからずっと文庫オフをチェックしていたが在庫なしのままなので我慢できずに定価で買った(^^ゞ)。これはめちゃくちゃ面白い。おすすめである。
扶桑社文庫『「鬼平」を極める』 表紙デザインはこちら
写真はこの前の「妹背山婦女庭訓」のために設けた仮花道の揚幕。3階からは見えないので1階席まで観にいってやっと納得した。監事室隣に鳥屋がつくられていた。両花道を設けた舞台を初めて観た時にチェックするのを忘れて次は絶対確認しようと思っていて、今回ようやく確認できたのだった。
以下、この公演の別の演目の感想
6/10昼の部①「侠客春雨傘」染五郎長男の初お目見得
6/10昼の部③「吉野川」
6/26千穐楽夜の部①染五郎の「船弁慶」
6/26千穐楽夜の部②「盲長屋梅加賀鳶」
6/26千穐楽夜の部③絶品の「御浜御殿綱豊卿」
追記
辛口の感想になってしまっているが、五月の演舞場の「釣女」があまりにも面白かったのでどうしても喜劇どうしで比べてしまうのかもしれない。「閻魔と政頼」も練り上げての再演に期待したい。