08/09/24 新秋九月大歌舞伎夜の部①「加賀見山旧錦絵」・・・・・・

玉三郎と菊之助の主従愛に泣いて泣いてリピートしてしまった2005年の10月歌舞伎座の「加賀見山旧錦絵」。
さて、今回はどうだろうか。残念ながら秋の健康診断が混んでいて予想以上に遅くなり、劇場に到着したら海老蔵の岩藤が尾上に武芸の心得は当然あるだろうとねちねちといびっている声がロビーに響いていた。うわーっ、高音域の発声をあの気の抜けたような声でやってる~。やばい(^^ゞ
【加賀見山旧錦絵】試合・草履打・尾上部屋・烏啼・元の尾上部屋・奥庭
この話は加賀藩のお家騒動と松平周防守の上屋敷の「草履打」事件を下敷に書かれている。だから舞台は加賀家。
兄の剣沢弾正と共にお家横領を企んでいる局岩藤が陰謀の密書を中老尾上に拾われてしまっていたというのがここまでの前提になっている。以下のあらすじは前回に詳しいので省略。
今回の主な配役は以下の通り。
中老尾上=時蔵 召使お初=亀治郎
局岩藤=海老蔵 剣沢弾正=團蔵
加賀家息女大姫=梅枝 庵崎求女=松也
奴伊達平=巳之助 牛島主税=萬太郎
海老蔵の岩藤は、俳優祭で観た「白雪姫」の鏡の精そのもの。美しいが冷たくシラケた感じがしている。声の音遣いがおかしいのでのっけから不安がよぎる。
亀治郎の召使お初が登場すると舞台の空気がサッと変わる。歌舞伎座昼の部の「竜馬がゆく」のおりょうを終えて演舞場とかけもちの大活躍。大河ドラマ「風林火山」でつけた自信で魅力倍増の亀治郎。「NINAGAWA十二夜」の麻阿からこっち、利発な女の役は亀治郎に任せておけという感じがする。さらに亀治郎のお初は下級武士の娘でしっかり者という感じも強い。時蔵の尾上はいかにも町方出身という雰囲気が出て、この主従のバランスのよさにいい芝居になりそうという期待が高まる。
しかし、「草履打」での岩藤が蘭奢待を預かっていた尾上に盗みを働いたと陥れて辱める場面、時蔵はいいのだが、やはり海老蔵の岩藤の声がおかしい。ビジュアルはいかにも綺麗でコワイお局様なのだが、台詞が入るとまるで漫画になってしまうのだ。
「加賀見山旧錦絵」は木原敏江の漫画『花の名の姫君』の中の「わたしが嫌いなお姐様」という作品にもなっているが、まさにそのイメージ!漫画になってしまっている~。
その上にこの日の大向こうがなっていなかった。3階の男の声。海老蔵の岩藤登場に「親爺そっくり!」。尾上の忍び泣きに「ホントに泣かないで」とかチャチャを入れてくれた。多分1階の女の声。タイミングのずれた「若成田」(だったと思う)......すっかり乗る気分をぶち壊しにしてくれた。大向こうさんの結束やらレベル維持はどうなっているのだろうと少し危惧。私は女性のかけ声も否定しないが、ヘタだとがっかりするので頑張ってレベルアップをお願いしたい。
「尾上部屋」での主従のやりとりはよく、ここがいいと後半の悲劇が盛り上がるんだよと思いながらドラマが進行。やっぱりちゃんと歌舞伎になっているとホッとする。
「烏啼」で不吉なことを言う中間を帰らせたあと、蘭奢待を盗んだ牛島主税と取り返そうとする奴伊達平の押問答に萬太郎も巳之助も頑張っているなぁと御曹司たちの成長を喜ぶ。そこにお初も加わっただんまりの末に文箱の封印が解かれて主人の危急を知ってお初が尾上の元に駆け戻る展開によくできた芝居だと今回も感心。
尾上の自害の後の場面は、前回とは違った演出を観ることができた。玉三郎の尾上はお初が戻った時には既にこと切れていて、お初は残された願書で次第を知るという本行=人形浄瑠璃を踏まえたもの。今回は尾上が自害の刃を突き立ててもすぐに命がつきなかったところへ岩藤がきて旭の弥陀の尊像を奪っていき、お初が尾上の最後に間に合って真相を聞いた上で尾上が断末魔の声を上げながらこと切れるというもの。尾上役者の見せ場を増やすという歌舞伎の「入れ事」ありの演出。まぁこれはこれでありでしょうという感じ(^^ゞ
亀治郎お初が主人を辱めた草履と尾上の血のついた懐剣を胸に仇討ちの覚悟を決める場面の舞台写真、一枚買い!
最後の「奥庭」。海老蔵の岩藤と亀治郎お初の立ち回りは楽しめる。手負いの海老蔵の岩藤の物凄い形相の写真も一枚買い(笑)
見事に敵を討った後で自害しようとするお初をとどめ、二代目尾上を許す上意書をもって庵崎求女登場。松也が麗しい捌き役で舞台をスカッと締めての幕切れ。
今回の見どころで「格調高い舞台を存分にお楽しみ頂きます」とあったが、格調は高く統一できていなかったというのが実感。やっぱり歌舞伎の場面と漫画の場面が交互にやってきて振り回された感じがした。お疲れ様~。
続く「かさね」で歌舞伎として口直しをすることができるかどうかで夜の部の満足感が左右されるという展開に・・・・・・。
写真は今回公演のチラシの尾上の時蔵を携帯で撮影。蘭奢待の箱に草履が入っているのを確認させられての思い入れの場面。
9/20昼の部①「枕獅子」
9/20昼の部②「源平布引滝」三幕