ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記 ♬ムラゴンブログ版

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

05/05/05 勘三郎襲名披露公演連続アップ⑧5月歌舞伎座夜の部その2

ぴかちゅう

『野田版研辰の討たれ(のだばんとぎたつのうたれ』
野田秀樹脚本・演出によるこの作品は4年前の8月に初演されたが、その時はまだ歌舞伎を本格的に観ていなかったために観ていない。一昨年の『野田版鼠小僧』を観て面白かったので今回の再演を楽しみにしていた。今回も中村梅之さんのブログで稽古場だよりをしっかり読んでから観た。
梅之芝居日記=http://blog.melma.com/00135602/
あらすじはまず、チラシの裏側にある解説より抜粋。「守山辰次は元は刀の研屋で、殿様の刀を研いだ縁で侍に取り立てられたものの、武芸はまったく駄目。家中の侍に打ちのめされた研辰は、家老へ意趣返しをしようとします。ところが、仕掛けがうまく行き過ぎて家老は死んでしまい、研辰は家老を殺した敵として追われる身となります。家老の息子二人に追われて、諸国を逃げ回る研辰でしたが...」。
私の誕生日は赤穂浪士討入の日。だから冒頭の討入シーンは誕生日誕生日って観てしまった。それを影絵で表現し、白い幕を落とすと剣術の稽古風景にするというのはなかなか面白い演出だった。
そこで辰次の勘三郎が真面目に稽古せずに他の侍達の反感を買い、さんざんに竹刀で頭を打たれているところ、松竹新喜劇のようなノリでバシバシと叩かれているようだがこれ本当?だとしたらけっこう大変な芝居だと思った。家老の三津五郎も大家に続く老け役だが前回の大岡越前同様こんなにはじけて面白い芝居を見せてくれてうれしい。家老の息子ふたりの染五郎・勘太郎の剣術の模範稽古風景は新撰組VS鬼御門という感じの殺陣がついていて気合いっぱいの感じがよい。そのふたりから敵と狙われるハメになるわけだから大変だ。辰次は逃げに逃げて四国の道後温泉の宿で長逗留。宿代の支払いを溜めて問い詰められて敵討ちの最中だと嘘をつく。赤穂浪士の一件以来、敵討ちがブームになっていて宿の者の人気をさらう。同宿の姉妹の福助・扇雀がおしかけ女房の座をめぐってたたかうのが可笑しい。
ところが敵と嘘をついた家老の息子たちも同宿になっており、対面するハメになって嘘がばれる。そうなると形勢逆転、姉妹は家老の息子兄弟に乗りかえるし、宿の者も全て敵に回り、また逃げ出す辰次。仇討ち兄弟と一緒になった群集に追い詰められ、いよいよ仇討ちされるところをジタバタしていろいろ言い逃れるのが見苦しくておかしい。ところが老和尚(橋之助)が示唆した言葉に「許してやれよ」という世論が群集の中に沸き起こり、兄弟は仇討ちをあきらめざるを得なくなった。兄弟も群集もいなくなり安堵しきった辰次だが、兄弟に闇討ちされて幕。

福助の一役目の殿の奥方の「あっぱれじゃ」の連発がまずハイテンションでいい。二役目の扇雀との姉妹もいいし、年増女の嫌らしさと可愛らしさの両方が好ましい。しのぶの芸者金魚もギター侍のパロディをやらされていたがこれまで観たことがないほど実に楽しそうに演じていた。染五郎・勘太郎も勘三郎にさんざんにからかわれながら楽しそうに演じている。仇討ちのための追跡の場面では『真夜中の弥次さん喜多さん』も群集に混じっていたのが可笑しかった。金髪のちょんまげと道中笠に名前入り。梅之さんの芝居日記によると初演よりも群集を増やしているようだし、群集の一人ひとりの演技も真剣でよかった。最後、群集心理が気まぐれのように大きく動いて人ひとりの運命を揺さぶる恐ろしさがきちんと伝わってきた。
兄弟はその場の雰囲気に飲まれて仇討ちをあきらめたようであった。しかし、元々が本人たちの自発的な仇討ちではなく、周囲がそれをやらざるをえないように追い込まれたのだ。このまま仇討ちをしなければ郷里の人々が帰郷を許さないだろうという、これも群集?の怖さゆえに闇討ちという卑怯な方法で仇討ちをする。野田秀樹の風刺がたっぷりきいている。
なにやらオペラの歌声が響く中で辰次の上に大きな紅葉が落ちてくる。この意味はちょっとわからなかったのだが、でも余韻が感じられる終わり方だった。
『研辰』でも幕がもう一度上がったが初演の伝説のようなスタンディングオーベーションは起こらなかった。『鷺娘』と両方立ってという風にはなかなかならないと思う。まあ初日が開いてすぐだということもあると思うが。

勘三郎は、8月の納涼歌舞伎は串田和美さんの演出のものをやりたいということらしい。7月の『NINAGAWA十二夜』もあるし、夏の歌舞伎座は熱くなりそうで楽しみだ。

写真は、中村屋の定式幕。3階席より携帯のカメラで撮影。
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