09/08/27 納涼歌舞伎千穐楽第三部①「お国と五平」こそ怖かった!

8/27に納涼歌舞伎千穐楽観劇した日の簡単な記事はこちら
【お国と五平】作=谷崎潤一郎
公式サイトよりあらすじと主な配役を引用の上で修正加筆。
闇討ちにされた夫の仇を求めて、旅に出た後家のお国(扇雀)は、家来の若党五平(勘太郎)と共にすすきでいっぱいの奥州那須野ヶ原にさしかかる。仇の池田友之丞(三津五郎)はお国の元許婚だったが、家老の息子にもかかわらず、剣術が下手な臆病者。愛想をつかしたお国は伊織の元へ嫁いでいた。
友之丞はそれを恨んで伊織を殺害し逐電。二人が国許の広島を出て3年が経って宇都宮で二ヶ月病みついてしまい、ようやくまた旅に出られたものの疲れやすくなっているお国。足をさすって励ます五平をお国は気の毒がる。
折から尺八の音が聞こえ、宇都宮の宿で聞こえていた音色だと気づいたお国は、もしや友之丞ではないかと思う。やがて虚無僧が現れて編笠を脱ぐとやはり友之丞だった。仇として討たれることを承知の上でなぜ自分たちを追ってきたのか・・・・・・。
ここからが3人の台詞のやりとりで見せるサイコサスペンス風の展開となる。
三津五郎の友之丞は家柄も容貌もいいが、生まれつきの意気地なしで剣術もからきしダメ。あまりの評判の悪さにお国の親族が評議の末に婚約を破談にしてしまうくらいだったというくらい、武家の社会では徹底的にマイナス評価をくらってしまった男である。そのダメ男を三津五郎がそれらしくやれるのかに注目した。千穐楽ということもあるのか、全く文句のつけようがなかった。一度思いつめた女をあきらめることもできず、その姿だけを追うことのみを生きるよすがにし、自分の理屈をこねることは上手なヤツ。
正体を現してしまって想いをぶつげて、お国から憎いとは思わないと言ってもらうと図に乗って一緒に暮らして欲しいと言い出す。それもお国と五平がすでに不義の仲になっているという秘密を知っているのをちらつかせてみたりする。ここまでは今で言うストーカーみたいな陰湿な人物だという印象。
それでもお国と五平が仇討ちを強行する気配を見せると、自分とお国が一度は契りまで結んだ仲だということも明かして二人を揺さぶる。ここでビックリして印象が変わる。一度のことで想いを深めてこんなに長く執着してしまうってけっこう純情なヤツじゃないか!恋敵を闇討ちにしたことは悪いが情状酌量してやりたくなってくる。自分を否定してかかる世間をアッとも言わせたかったのだろう。
ちょっと友之丞が可哀相に思えた時、二人は秘密を葬り去り、3年の艱難辛苦と引き換えに五平を忠義の男として武士にとりたててもらって一緒になれるように、友之丞の命を奪うことにするのだ。五平に一太刀浴びせられると止めはせめてお国にと所望する願いさえ聞き届けずに五平が止めを刺す。
お国と五平が自分たちの幸せのために、恨みの気持ちもなくなっているのに友之丞を殺す!これこそが怖いと思った。ゾッとした。今回の納涼歌舞伎の全ての演目の中で一番怖かった。
勘太郎の五平は熱演。しかし扇雀のお国がニンではなかったとつくづく思った。3年も仇討ちのために流浪するのだから気丈な女なのだろう。しかしながら、友之丞にここまで執着させる色気が感じられない。五平に足をさすってもらう場面で二人の不義の仲がわかるという設定なのだが、そこもあまり感じられない。若い五平が放っておけずに支え続け道をはずして不義になるまでの魅力があるとは思えない。
別のキャストでもう一度観てみたいと思ってしまった。
写真は歌舞伎座ロビーにあった納涼歌舞伎の「お国と五平」の特別ポスターを携帯で撮影したもの。このポスターだけでは「友之丞とお国」(笑)。友之丞はそうなりたかったんだろうにね。
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